ベア小話8 心 通わせる生きもの
これまで、縁のある様々な事情を持つ方にテディベアを「お薬」として差し上げてきました。病気や精神的な苦痛など、人は皆、何かしらの痛みを持っているのかもしれません。
「ペットロス」になってしまった岩手の友人のことは「ベア小話4」でご紹介しました。黒猫を亡くしてから眠れなくなってしまった彼女が「ベアむんと」と一緒に暮らしはじめて、眠れるようになったという話です。
今回は福岡在住の友人の話です。
彼女とは長いあいだ会う機会がなくて、きっと元気にしているんだろうなぁと思いながらも、日々の忙しさにかまけていました。そんなある日、ひょんなことから彼女のご主人に会う機会があり、そこで彼女のことを聞いた私は、早速テディベアを送って差し上げたのです。
詳細はあまり聞かずじまいでしたが、彼女の心とからだのエネルギーが下がっているのかなぁと、その時とっさに思ったのです。
その夫婦が飼っていたのはゴールデンリトリバー、捨て犬でした。
ある日車を運転していたら、犬が道を歩いていたので、飼い主を探し回りましたが見つからず、結局引き取ったそうです。
飼い始めるとこの子がてんかん持ちであることを知りました。たぶん元飼い主は、この子の病気を知って捨てなんじゃないか、と私は想像していますけれど。
夫婦ふたりでその子を愛慕しながら我が子のように育てました。とても賢い犬で、人間の言うことは何でも分かっていたそうです。てんかんの発作は、亡くなる少し前からはひどくなっていきましたが、最期まで懸命に介護をして看取りました。ふたりの愛情をたくさん受け取って、とても幸せな犬性を送ったと思います。
犬が亡くなって月日は経ちますが、心の中に空いてしまった大きな穴を、彼女はずっと埋めることができないでいるのだと想像しています。
偶然にも彼女に送ったテディベアはゴールデンリトリバーの毛色でした。ちょうどこのベアを製作中に話を聞いたので、これはきっと神様が事前に設定してくださったのだなと思いました。
できあがったベアの毛は波打っていてフサフサ。あたたかい目をしたベアになりました。
彼女が付けた名前は「タクちゃん」。たくさんの温かい想いを届けてくれるから、だそうです。
ベアが届いた日から、彼女はタクちゃんを肌身離さず、抱きしめ、見つめ合い、一緒に寝ています。
きっとタクちゃんは、他のベアと同様、ずっと彼女を包み込んで守ってくれていることでしょう。
ベアという形をした小さな神様は、一緒にいる人を光で包むのがお役目ですから。
ベアが届いて4日目。彼女からタクちゃんの絵(未完成ですが)の画像が送られてきました。
「久々に昨日、いい気持ちになった時間があったので」という言葉を添えて。
私がなぜベアを作り続けるのか。それはただ好きだから。作りたいから作るのです。
はじめから作る目的や理由があると、あまりいい顔にならないのです。
思惑がそうさせるのか。気張ってしまうのか...。だから、できるだけ作るときはまっ白の状態で作ることにしています。その先は天にお任せです。
何も考えずに没頭する。手仕事のいちばん大切なところなのだと思います。
0コメント