宮本しばにのこと
1999年〜2023年まで、素描料理家(創作野菜料理)として24年間、素描料理を追求しながら、日本の台所道具販売、執筆活動、台所道具展示会の開催など、料理の仕事に携わってきました。
拙著として「焼き菓子レシピノート」「野菜料理の365日」「野菜のごちそう」(3冊とも旭屋出版)、「野菜たっぷりすり鉢料理」「台所にこの道具」(2冊ともアノニマ・スタジオ)「おむすびのにぎりかた」(ミシマ社)など、自費出版を含めて7冊を出版。
そして、そのあいだに2回の乳がんを経験。1度目は自然寛解をしましたが、14年後の2023年に再発。部分切除の手術を受けました。
この2回のガンは私の人生にとっては人生最大のピンチだったわけで、様々なことを考え悩みましたが、大きな転機でもありました。
2回の大病で今思うことは、ガンは「Wake Up Call (目覚まし) 」であるということです。今までの生き方を180度方向転換しなければいけないサインなのではないかと。歩いてきた道の大修正を迫られているような感覚です。
それは「心を裏返す」という表現がぴったりかもしれまん。
今まで正しいと思っていたことも、良かれと思っていたことも、すべて見直し、まっさらにしてみる。やりすぎたことや思いをやめてみたり、凝り固まった意識にマッサージをしてみたり...。
そんなことを繰り返しながら、長い月日を過ごしました。
がんは慢性病ですから、根絶することが難しく、不安との戦いでもあります。今までの生き方を全取っ替えするぐらいのエネルギーが必要です。
あくまで個人的な見解としてお伝えするなら、ガンは魂的な病気なのではないかと思います。
わたしの場合は、自分に対する愛情欠如や自己肯定が足りていないことが大きな原因だったのかなぁと。ダメだダメだと自分を攻めてばかりいた...。自分を愛し大切にしてこなかったことが、病気の大きな原因ではないだろうかと、今は思っています。ですから、まずは自分の世界を愛し、幸せにしていくことをフォーカスを置いています。
自分の世界を愛する、ってちょっと分かりにくいかもしれませんけれど、自分を含め、関わるすべてのモノや人を幸せにするために、自分は「今この瞬間」何ができるか、ということです。
それはどんなに小さくても構わないんです。隣で塞いでいる子供とか連れ合いにおいしいごはんを作ってあげるとか、土が乾いている花に水をあげるとか。ずっと会えない友に手紙を送るとか、ね。
自分の世界を善くしていくことは、宇宙を善くしていくことである、が真実なんじゃないかと。だから自分と自分の周りを幸せにしていく。これが人間ひとりができる精一杯なのだと思っています。この世の中を善くしようと躍起になったとしても、自分の世界がぐちゃぐちゃだったら、世界はぐっちゃぐちゃのまま。自分の世界を幸せにしていこう、愛していこうという気持ちが結局、宇宙全体を善くしていくのだと、私は信じています。小さいことと思っていることが、ほんとうはすごく大きいことなんだってことを、今だから自信を持って言えるのです。
だからね、どうしても愛せない人やモノやコトは自分の世界からは去って行ってもらうのです。これは大変だけれど大事だと思っています。人を追い払うのではなくて、自分の世界からは去ってもらうけれど、その人が別のところで幸せになっていくことを願って。
自分を愛すというのはナルシストとは違います。例えばそれは、
誰かに対してちゃんとNOと言えること。
嫌なことははっきり断ること。
ボロボロになるまで周りに振り回されないこと。
好きではない食品を健康のためだと言って、無理に食べないこと。
宣伝やSNSに影響をされないこと。
人と違っても、それを愛すこと。
自分を否定しないこと。
つまり「素の自分」でいることです。条件なしで自分を愛するということです。
人は幸せになるために生まれ、人生に何が起ころうと、悲しみや辛いことがあっても、自分なりに「幸せ」という形に変換していくことが、自分を生きることなのではないでしょうか。そして最期に「あぁ、幸せだったなぁ」と言いながら天に還ることが、人間の天命であると信じていますし、2回のガンから学んだことです。
テディベア製作はわたしの魂を癒すものとしてあります。その小さな魂を日々、コツコツと育てていくことで、心が温まり、輝やかしてもらえるのです。ベアは’わたし’をよく知っていますから、お互いを見つめるだだけで万事大丈夫と思うのです。ほんとうに不思議な存在です。
わたしにとってベアは「小さな神様」であり、お守りみたいなもの。そして私の鏡(分身)でもあります。内面をととのえるためにベアを製作をしているのかもしれません。
ときには病で苦しむ友のために、ベアを作ります。ときには感謝の意を込めてお世話になった方に作ります。それが自分の世界を広げていくことだから。
動物セラピーや音楽セラピーがあるように、テディベア製作は私にとって’ベアセラピー’です。
この小さな魂、あたたかくて、かわいいお守りを広めるために、日本を駆け回りたいと思っています。
テディベアの講師としては、私はずいぶん不足しているし、職人としても全く足りていないかもしれません。けれど、ベアが人の魂を明るく輝かせてくれるという理由だけで十分だと思っていますし、何より、ひとつひとつの小さな魂を作っていく喜びがあることで、目に見えないけれど、とても大切な部分が育っていく気がしています。
ゆっくりと、ワクワクしながら、ずっとテディベア製作を愉しんでいきたいと思っています。
宮本しばに
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