ベアの顔作り
テディベア製作で一番むずかしいのは「顔」作りです。
綿の詰め方からはじまり口の刺繍まで、とにかく気を緩ませることなく手を動かすこと。少しでも気になったらやり過ごさずにもう一度やっていみることが大事だと思います。「ま、いいか」で作ればどんなモノでもその通りに出来上がってしまいますから、その時の自分のベストを形にすることにフォーカスしています。
モノ作りに正解はありません。だから自分の’これが好き’にフォーカスしていくことしかないのではないかと。好き、を高めていくこと。このことが結果につながるのだと思っています。
それぞれの顔つくりは、何度かやり直して納得できなければ一旦、手を休めて次の日にもう一度やり直します。時間を置くとまた、新たな視点で見ることができますから。
今の自分の「心地いいバランス」を探す。これに尽きるかなぁと。
顔はそれぞれ個性が現れます。ひとつひとつ、性格のようなものが出るんですね。
今まで27体のテディベアを製作しましたが、同じ顔はひとつもありません。そこがハンドメイドである証でしょうか。ただ作り手が同じだと、顔はみんな違っても雰囲気は似てきますね。作り手の魂がベアの中に入り込むということでしょうか。
今度はこんな顔にしてやろう、というおごりの気持ちはなく(というか、作れない)、意図せずに、無心で製作するのが一番だと思っています。顔が出来上がるまではいつもドキドキですが、この「意図しない」ところにベア製作の面白さがあるのです。
料理仕事をしていたとき、探求していた「素描料理」では、意図せずに料理した先に’わたしの素’が現れて、思わぬ発見をすることがよくありました。テディベア製作も同じで、いつも学ぶことがあるし、全く飽きることがありません。むしろ、ベアの顔つきがいつも違うことが面白くて仕方がないのです。
顔の製作について、ポイントとなるところを文章で表すことができるのか?と自問してみましたが、顔作りは技術的なことより、感覚的な部分が大きく、明確には答えられません。
私が製作する上で、意識している点は、
1. 口の刺繍
たったひと針で口の表情が変化します。少し意図的に刺繍することができる箇所でもあります。
多くのベアはへの字が多いですね。あれはなぜなのでしょう。私としてはベアを手に取ったとき、ニッコリと微笑んでくれるベアに見つめられたいと思うのです。自分が嫌な気分のときも、ベアが笑ってくれたら、それだけで心が温かくなりますから。だから私はいつも、ベアの口は「嬉しい」を表現するようにしています。
2. 目の位置
これが一番の肝で、0.5mmでも違えば、顔の表情が全く違ってきてしまいます。
アイチェッカーを使って、どの位置がいちばん目ヂカラが出るか、愛らしくなるか、を何度もチェックします。綿の詰め方や耳の位置で目の位置は変わりますから、アイチェッカーで何度も位置を確認します。できあがった顔を胴体に取り付ける直前まで、目の位置は直しが利くようにようにしておき、最後の最後で位置を変えることもあります。
目はすべてを物語るから、ここに妥協はありません。
3. 右目、左目のバランス。
右と左の目が平行になっているのが一番なのでしょうが、私の場合はそのあたりは少し曖昧で、まっすぐ平行になることが必ずしもベストなのか、は今は私には明確に答えることができません。
顔の右と左があまりにもきれいにまとまっていると、かえってバランスが良すぎて面白みがないという気もしています。ですから全体の配置を考えて、愛らしい顔になればよし!という気持ちで作っています。
結局のところ「心地いい場所」をひたすら探すことかな。
ベア製作にあたっては、作り手がそれぞれの感覚を信じいればいいのだし、私も自分の感覚を信じて作っています。モノ作りに正解はないから。
自分にとっての「愛すべきベア」とは?をひたすら追求していけばいいのだと思います。
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